アール・デコ様式の粋を尽くした、旧朝香宮邸
旧朝香宮邸について
朝香宮鳩彦王(久邇宮朝彦親王の第8王子)がパリ遊学後2年をかけて建設した、鉄筋コンクリート造2階建て(一部3階建て)、地下1階の建物です。
建築設計は宮内省内匠寮(担当技師は権藤要吉)で、内装はフランスのインテリアデザイナー、アンリ・ラパンが担当しました。また、正面玄関にある女神像のガラスレリーフや大客室のシャンデリアなどは、フランスの宝飾デザイナーでガラス工芸家でもあったルネ・ラリックの作品です。
1925年パリ万国博覧会で当時流行していたアール・デコ様式を見物し、ラパンやラリックの作品に感銘を受けた朝香夫妻が帰国後、自邸にふんだんに取り入れました。
妻である允子妃(明治天皇の第8皇女子)は、花をモチーフにしたラジエーターカバーのデザインにも携わり、仏辞書を片手に翻訳しながら手紙でのやり取りを、建築設計をした宮内省内匠寮の技師らに伝えるなど積極的に関わりました。
1947年の皇籍離脱まで朝香宮鳩彦王が暮らしました。
狛犬
玄関ポーチには狛犬が鎮座しています。外観は簡潔なデザインです。
玄関ホール
内観の入り口である正面玄関ホールに足を踏み入れると、ルネ・ラリックのガラスレリーフが迎えてくれます。型押しガラス(溶けたガラスを型の中に流し込んで、形を作ります。型の凹凸によって、模様やデザインが付けられます。)製法で作られ、1点もので貴重な作品です。 壁は大理石です。
玄関床 モザイク
細かい天然石(外国産大理石)で制作されました。宮内省内匠寮技手の大賀隆が手掛けました。
大広間 大理石レリーフ
大広間に飾ってある大理石レリーフは、ヴァン・レオン・アレクサンドル・ブランショ「戯れるこどもたち」という作品です。
小客室 壁画
小客室の壁にはアンリ・ラパン制作の油絵が張られています。樹々と水のある風景が描かれ、室内にいながら森の中にいるような印象を抱かせます。
次の間 香水塔
アンリ・ラパンが制作し、フランス海軍より朝香宮家に寄贈されたものです。水が流れるような仕組みがあり、照明の熱で香りを漂わせたことから、その名がつきました。
大客室
マックス・アングランの銀引きフロスト仕上げのエッチング・ガラスを嵌めこんだ扉にはチューリップなどがモチーフにされています。
大客室 扉装飾
扉のタンパン(アーチと梁に囲まれた部分)装飾は、レイモン・シュブが手掛けました。
大客室 暖炉
暖炉のレジスター(暖炉や薪ストーブの火を燃やす際に、空気の流入量を調整する装置)にも幾何学的にデザインされたチューリップをモチーフに装飾されています。
大食堂
窓からは庭が見え、開放的な空間になっています。植物模様の壁は、レオン・ブランショが手掛けました。
大食堂 暖炉
暖炉の壁画は、アンリ・ラパンが手掛け、赤いパーゴラと泉が油彩で描かれています。
大食堂 照明
ルネ・ラリック作の照明器具には、パイナップルやザクロ等の果物がモチーフになっています。
階段
ラジエーター
ラジエーターとは、暖房器具用カバーのことです。魚や貝がデザインされています。
書斎
殿下居間
第一浴室
殿下が使用した浴室といわれています。山茶窯製陶所製のモザイクタイルで、壁はフランス産の大理石が使われています。
ベランダ
朝香宮夫妻が使用したベランダです。床にか国産の区黒と白の大理石を使用して市松模様で敷かれています。
バルコニー
半円型バルコニーには、泰山タイルが使われています。
ウィンターガーデン
温室として作られました。そのため、水道の蛇口や排水溝が備えつけられています。第二王女の湛子女王によるち、よく卓球台を置いて遊んだらしいです。
各部屋にあった照明器具です。
各部屋の天井に施されていた装飾です。
新館
旧朝香宮邸 庭園
茶室「光華」
こちらも国の重要文化財です。中川砂村が設計し、大阪の数奇屋大工棟梁平田雅哉が施工して、昭和11(1936)年に上棟しました。「光華」という名称は、朝香宮鳩彦殿下が命名しました。
日本庭園
「日本庭園」の他に、「芝庭」、「西洋庭園」と3つのエリアがあります。
Café TEIEN
新館1階にあるCafé TEIEN
写真は「オープンサンドイッチ “タルティーヌ” セット」。ガラス張りの店内から緑豊かな庭園が見えます。テラス席もあり開放的です。ケーキなどのカフェが楽しめるほか、フードメニューもあります。
旧朝香宮邸 歴史
1923(大正12)年、軍事研究のため欧州へ留学していた朝香宮鳩彦王が自動車事故に遭い、看病のため允子妃が急遽渡仏し長期滞在をする事になりました。
1925(大正14)年7月パリ万国博覧会で朝香夫妻は、アール・デコという当時最先端のデザインに魅了され、帰国後の自邸建設に取り入れる事にしました。また設計をになった権藤要吉も、同時期に博覧会を見学し、アール・デコデザインについて多くを学びました。
アール・デコ様式とは、大量生産と工業化の時代に対応した従来のデザインに捕らわれない新しいデザインを目指したものでした。シンメトリーなデザインが特徴で幾何学的な模様が多く使われます。金、銀、象牙、大理石など贅沢な素材が使われたり、機能的でありながら装飾的な要素を持っています。
1933(昭和8)年5月に完成しました。約14年間朝香宮邸として使われました。各室の内装を手がけたのはアンリ・ラパンでした。1階はパブリックスペースとして、二階は家族が過ごすプライベートスペースとして活用されました。
1947(昭和22)年から約7年間、外務大臣公邸・首相公邸として使われました。吉田茂、片山哲、芦田均などが居住しました。1951年8月末、アメリカとの安全保障条約締結に向け、ここから羽田空港へ向かいました。戦後日本の政務を司る場として、重要な役割を担いました。
1955年(昭和30)年から約19年間、国の迎賓館として使われました。赤坂迎賓館が改修を終えるまで40人以上の賓客を迎えました。初めて訪れたのは、タイ王国の首相だったという記録が残っています。
1974(昭和49)年から7年間、民間の催事施設として使われました。結婚式場、レストラン、夏にはプールの開放、ビアガーデンなど一般の人々が利用できる施設になりました。
1983(昭和58)年、東京都庭園美術館として開館しました。
2015(平成27)年、国の重要文化財に指定されました。
権藤要吉が手掛けた現存する建物
旧朝香宮邸の建築設計を担当した宮内省内匠寮(担当技師は権藤要吉)が携わった現存する建物です。
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御料館
1927年に北村耕造のもとで携わる。
住所 長野県木曽郡木曽町福島5471-1
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旧李王家東京邸
1930年(昭和5年)に李垠の邸宅として造営された木造2階建の洋館。設計は北村耕造、権藤要吉ほか。
住所 東京都千代田区紀尾井町1-2
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学習院校舎西一号館
1930年(昭和5年)に中等科教場として建てられた建物。基本設計を担当。
住所 東京都豊島区目白1-5-1
旧朝香宮邸の詳細
所在 | 東京都港区白金台5-21−9 |
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電話番号 | 050-5541-8600 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
休業日 | 月曜日 |
料金 | 展覧会観覧料(大人1000円、大学生800円、高校生・65歳以上500円、中学生以下無料) 庭園のみ入園(大人200円、大学生160円、高校生・65歳以上100円) |
アクセス | 都営三田線・東京メトロ南北線「白金台駅」1番出口より徒歩6分 JR山手線「目黒駅」東口/東急目黒線「目黒駅」正面口より徒歩7分 |
URL | 東京庭園美術館 |
旧朝香宮邸の地図
旧朝香宮邸を巡るお散歩コース
